低周波音に於ける「心身に係る苦情に関する参照値」の謎

みなさま、どうもこんにちは。

  以前2回に亘り、ここ青山高原に於ける住友林業()の行いを、辿ってみました。


 今回は、疑問に思っていた「心身に係る苦情に関する参照値」(以下、心身の参照値と略)と、このまま風車が運転に至ってしまうとどうなるか?について考えてみました。

  

心身の参照値とは、家庭用給湯器などから発生する、低周波音の許容限界を調べる為に、各年代の男女と、被害を訴えていた数人を加えた20人程度で行われた、調査から導き出された値のようでした。

 寝室を想定した実験で、単一音源を使って各周波数ごとに、どの程度の音圧迄なら大丈夫なのかを調べた結果、90%の割合の人が、その値以下であれば、騒音として許容できる範囲であると示したものが、心身の参照値ということらしいのです。

 要は、人が睡眠を取る場合に限り、騒音という聴覚を主体とした感覚で、この位迄なら大丈夫という値であって、紫外線や放射線のように、自覚無くとも有害であるかどうかは、調査されていないか、情報公開されていない実験であるということなのでありました。

 

 例えば、感覚値の規格改正などでは、延べ数万人の被験者で、数百万回に及ぶ実験が行われるそうなのですが、心身の参照値は前述の通り異例ともいえる人数の少なさで、本来なら各々の詳細な内容が公開されても良いはずなのに、情報公開が少なすぎると感じました。

 ひょっとすると、この実験は、最初から危険があることを考慮して、その補償と経過観察を前提の上に、実際の被害者を含んだ最小限の人数に絞らざるを得なかったのかも・・・と考えることもできそうです。

 

 風車騒音は、この参照値の実験とは、様々な部分で違っていて、大きな違いの一つは、複数の音源を持つという所だろうなと思われました。

 このことによって、複数の音源が共鳴、増幅して音圧が上昇し、被害が甚大になる場所と、反対に相殺されて小さくなる場所ができ、単独音源による参照値の実験とは、決定的に異なると考えられるのです。その場所は、周波数によって異なるところからも、音源から何キロ離れれば、強い音圧に晒されないから大丈夫だとは、言い切れないと考えられます。

 

 当地も、2021年の夏季の騒音調査を目にするまで、まさか近隣風車群から3km以上も離れている場所で、超低周波音が全体的に、こんな音圧になっているとは想像もつきませんでした。それも、風車は、タワーすら建っていなかったし、その日は無風に近く、自然由来のものも考え難い状態です。

 

 通常、複数の音源から同等の音が出ていても、音圧は、それ程上昇しないという原理のようです。2019年に住友林業が算出した、建設予定4基の騒音シュミレーションでも、最大の1基の風車の音圧より、4基での合算は、僅か数dB高くなっているだけでした。

 けれど、複数の音源が、数十基に及ぶ風車群を含むなら、共振する可能性も高く、場所によっては、2019年から数十dBの上昇があった地点3のように、とんでもない音圧になってしまうところもあるのだろうと推測できるのでした。しかも、この地点3は、2021年の秋季の計測時には、稼動前で、あまり風が吹いていなかったから、定常稼動になると更に数十dB上昇する可能性が高いのです。

更には、80dBの周波数帯で参照値超えを起こしており、そのような、被害が大きくなりそうな地点は問題になるからか、当地で参照値超えを起こした地点3での計測は、予定されていた試運転段階から故意に外されていました。

 

 超低周波音の帯域は減衰し難いので、後半でも触れますが、一時的にでも参照値超えになりそうな範囲は、現時点でも、風車群から少なくとも4キロ以上に及んでいるのが、現状でしょう。

 巨大風車における騒音シュミレーションは、風車群との共振も考慮したものでないと現実的ではなく、当地でも建設前から大幅な予測値超えを起こした結果となっていたのですから・・・。

 

 

 このように心身の参照値は、風車騒音の状況とかけ離れていて、環境省のサイトでも確認できることから、使えないことが明白です。けれど、あまりに違う状況でも、風車騒音に低周波音の基準値が無い以上、参照値を目安にするしか無いんだろうなとも思えました。

 

 では、どうして風車騒音の低周波音には、基準値を制定できないのでしょうか?

 

 

 聴こえる音には環境基準値を適用し、低周波音には前述の参照値、そして、聴こえない音である20Hz以下の超低周波音は、音として耳に聞こえないから、人体への影響は無いものとして扱われてきたらしいのです。現代の我が国で、俄かには信じられない現実に、始めて知った時には戦慄が走りました。

 

 現在の低周波音(超低周波音を含む)の計測は、この考えを基本としているようで、五感で捉え難い音は、補正値というものが適用され、例えば、G特性音圧レベルの1Hzの周波数帯の補正値は、40dB以上のマイナス修正を施される仕組みになっているそうです。これでは、瞬間的に非常に高い音圧が発生していても数値には表れて来ないから、危険では無いと錯覚してしまうと思われます。1/3オクターブバンド音圧レベルの方の結果も、平均値しか記載されていないのでは、瞬間的に起こる非常に高い音圧の発生は、完全に見えなくなってしまう。衝撃波のような形で、高い音圧が襲ってくれば、人体の器官が一瞬で機能不全に陥る危険性もあるというのに・・・。

 当地の計測結果の音圧レベルには、どこにも最高値の記載が無いことから、平均値であり、もっと高い最高値の音圧は、既に隠されてしまっていると推測できるのです。

 

 

 

 ただ、規制基準値の無い状態では、限界が来ている感じです。

 

 

 現在、当地でも、1Hzの周波数帯で、70dB以上の音圧が計測されている場所があり、これは、おそらく平均値であって、最高値はもっと高いはずです。状況的には、1基の風車と、タワーとナセル迄組み上がったものが1基、しかも稼動前で、風もあまり吹いておらず、距離は風車から1.21.3km程、タワーのみの方からは900m前後の距離だと思われます。

 定常稼動の風速で最高値なら、大変危険な音圧に迄、上昇すると推測できます。

 

 もう一つの「物的苦情の参照値」は、70dBの音圧でさえ、物体そのものが持つ振動数に共振すれば、建具などがガタついてきて、時間の経過と共に壊れてしまうのです。音圧が高ければ一瞬で崩壊することもあり、それは、建具だけに起きるものではなく、同様の原理のパワーの凄さは、動画などでも閲覧できる恐ろしいもので、容易に二次災害に繋がると予想できます。

 この世界の物質は全て、その振動によって成り立っていることと、長期的な作用を及ぼす時間を考慮すれば、周波数帯によっては、70dBの音圧でさえも、安全であるとは言い切れないのが実状だと感じています。

 

 

 1Hzの高い音圧が計測された地点は、ガーデンヴィレッジの中では風車から最も遠い場所です。500mを切るような距離にも建設予定のものがあり、全て4基建設されたら、ここは、いったいどうなってしまうのでしょうか?

 

 驚くことに、前述した3kmちょっとの距離にある40基程の風車群の騒音調査会社は、現在、住友林業()が依頼している、一般財団法人三重県環境保全事業団でした。201720183(しかも3月中旬で冬季調査となっている)にかけての調査では、2017年の7月に行った夏季調査で、風車群から4km程度の場所でも、25Hz以上の周波数帯は、風車停止時に最高値で参照値超えを起こしていて、80dB程度の音圧となっていたのです。

 この風車群の中でも8基が、当地から北北東の場所にあり、その他の風車群が北にあることから、北から北北東にかけての方角から風が吹いて、住友林業が建設した風車と一直線上に近い並びとなる時、周波数帯によっては、非常に共鳴し易く、風下になる当地には、とても危険な配置ではないかと思われました。

 季節や気象によって、いつ、そのような方角から風が強く吹くかは、住民には予測できません。しかし、気象データの記録があれば、それは可能で、その時を避けて計測すれば、参照値を超えるような、高い音圧になることも無い予測だったのでしょう。このような方角からの風の無い時期の日を選んでの計測が、2021年の夏季と秋季に行われたものと推測できるのでした。

 それ程、用心していたのに、参照値超えの周波数帯がで出てしまう程、共振増幅作用が簡単に起こる数の風車が、既に建設されてしまっている現実があるということなのです。

 

 そして、この危険な風車の並びを更に延長していくと、偶然かもしれませんが、数キロ先には、その影響が及んではならないような場所に行き着くことになる・・・。

 現在建設されているものの稼動や更なる建設は、当方には、この国の先行きに関わる重大事のように感じられてしまうのでした。

 

 

 住友林業()側は、20219月の保健休養地での説明会にて、出力制限の根拠を、時間のかかる環境アセスメントを避けたかった・・・と説明されたそうです。しかし、上記の参照値超えの高い音圧は、5年前、2017年の夏季には計測されていたので、FIT申請以前に、近隣風車群からの強い影響も想定済みだったと考える方が自然です。

 それ故に、一般公開の必要性と情報公開の記録が残り、有識者の目に触れる可能性の高い、通常の環境アセスメントを避けるべく、出力制限で規模を抑えた可能性が高いとも考えられるのです。

 

 それは、調査後1ヶ月で送られてくるはずの報告書が、参照値超えを起こした秋季の計測結果の場合、2ヶ月以上経って2月に送られてきた時も同じように、不利な状況を隠蔽したい傾向が伺えると思いました。当初2月に、保健休養地側での説明会が計画されていたので、参照値超えのデータを公表したくなかったと考えられます。

 

 そして、指針に沿った事前調査が出来てないのに、試運転の話迄出てきたのです!!

 

 現状のまま試運転に至るということは、住民を、本人の了承無く、事前の正確なデータを伏せたまま、稼動前に参照値を超えていながら説明も対策も行わず、低周波音(超低周波音を含む)における人体実験にかけているのと同じだということになる・・・

 

 

果たして、このような状況は、人権を尊重しているといえるでしょうか?

 

 

 状況からも、参照値超えや数々の影響がある事を、全て承知して行われた末の建設であり、試運転であると考えられるからです。そして、風車は各地点における音圧危険度のレベルで、ストップしてくれる訳ではないから怖いのであって、現在、超低周波音に規制基準はないのです。

 それ故に、低周波音の保全目標値とは、住友林業(株)の倫理観が全て現れたものとなり、当地の環境保全は、それに委ねられることとなるのです。

 

 

 日弁連が、経済産業省や環境省に行った、健康被害の医学的調査や低周波音の規制基準を求める提言から、既に十年近くが経過しようとしています。それは、被害者が一般市民であるから、無視していても大丈夫だと考えられていたのかもしれません。しかし、この十年ほどの間に、状況は、思わぬ方向へ展開しているように思われます。

 数十基の風車群であれば、その音圧が共鳴現象を起こせば、相当な被害となることは確実で、前述した1Hz周辺の超低周波の周波数帯には、特に危機感を覚えています。

 非常に減衰し難いので遠く迄影響を及ぼす上に、人の脈拍と周期が近いので、血流に影響が及び、そこから、循環器系を始め、急激な眩暈による転倒や事故、突然の心肺停止など、関連づけがなされてなくとも、原因不明な、病気や事故原因の中に、確実に発生しているとの実感があるからです。

 血流に影響が及べば、脳へ供給される酸素量にも影響し、睡眠障害、認知症など、脳へのダメージや、脳の損傷を受けた部位が司る器官の機能不全にも繋がる恐れが出てくるように考えられます。

 

 又、物的な建具等に共鳴現象を起こすのであれば、実は、山に生えている樹木などにも、ある程度は、影響を及ぼすのではないでしょうか。根は地中深く及んでいるものもあるので、土砂災害等は大丈夫でしょうか?木造家屋の共振周波数は、8Hz辺りだったような記憶があるので、そのような考えが頭に浮かんでくるのかもしれません。

 

 そして、音圧が参照値以上に上昇する地点が、現在既に判っている範囲だけでも4キロ以上に及んでいる事実から、車や列車を始め、航空機などの運転中に突然の高い音圧に晒される危険も孕んでいると考えられるのです。しかも、その音圧上昇の地点に、住居や勤務地、航空機関連の離発着場所などが含まれれば、睡眠障害に始まり、原因不明の事故や病気等、更に深刻さが増すと推測できます。

 

 海外の風車先進国と呼ばれる国々が、こぞって洋上発電に移行しているのは、何らかの理由で公にできない部分があるものの、既に上記の健康被害が確実であることが、その根底にあるのは、隠し切れない事実であるでしょう。もちろん、洋上であるから安全であるとは言えないのですが、少なくとも人の居住エリアから少しでも離す方向であるのは、世界的な傾向であり、政府の責任であると考えられます。

 居住区から1kmでも決して十分とは言えないのに、500m程度の距離に建設しようという思考そのものが人道的な倫理感に欠けており、住民への安全対策等は全く考えていない態度といい、サスティナビリティとは完全に相反するもので、何故、第24回の環境報告大賞などを受賞できたのかが不思議です。

 そして、参照値超えの事実に対して、この5ヶ月ほどの間、何の説明も対策も無いところからも、風車さえ建設してしまえば、稼動させなくとも、風が吹くだけで、超低周波音は高い音圧で発生するので、確実に健康は損なわれていくから、いずれ住民を一掃できる。と、人権尊重とは、かけ離れた、そのような思考が透けて見えてくるような今日この頃です。

 

 上記の推測と立地的な条件から、ここ青山高原に、これ以上の風車建設を許してしまうことは、低周波公害とは無関係と思われていた、近隣の市町村にも広く影響が及んでおり、電力供給の重要性以上に、この国の安全保障の根幹を揺るがすものに繋がり兼ねない懸念として挙げられ、これが当地だけに起こっている事、当方の単なる推測だけで終われば幸いだと、今は感じています。

 

                                      U.

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